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2022年9月

2022年9月16日 (金)

おばあちゃんの肉玉そば

録音風物誌2022年度番組コンクール 優秀賞作品
再放送

2022年9月26
日~2022年10月2日放送 
中国放送 RCCフロンティア 馬越 弘明

【番組概要】
広島市民のソウルフード「お好み焼き」。
57年前からお好み焼き店を営む梶山敏子さん(80)は、スタンダードなお好み焼き・肉玉そばを500円で提供しています。有名店では1000円近くするお店もある中で、それは広島市民でも驚きの価格。
敏子さんは、35年以上その値段を守り続けています。しかし、原材料費の高騰が襲いました。
それでも値上げをしたくないという敏子さん。なぜ敏子さんは500円の値段を守り続けるのか?
そして、「値上げをするくらいならお店をやめようかな…」そんな敏子さんの一言を聞いた常連さんがとった行動とは?8人が入ればいっぱいになる、小さなお店の物語です。

【制作意図】
「この時代、500円で肉玉そばが食べられるお店があるの!?」
そんな驚きが、取材をスタートさせるキッカケでした。取材をしてみると、店主がその値段にこだわる理由には、広島とは切っても切れない背景がありました。そして、そんな店主の思いを共有した常連さんの行動力がありました。戦後を生き抜いた、1人の広島市民の思いをお伝えできればと思い、制作しました。

【制作後記】
広島には本当にたくさんのお好み焼き店があります。「麺がパリパリ」「キャベツが太め」「卵がトロトロ」など、それぞれのお店に特徴があります。そんな中、小さなお好み焼き店で提供される500円のお好み焼きに、こんな物語があったなんて…。原爆の被害にあった広島では、1人1人の人生に壮絶なドラマが詰まっている。改めてそんなことを感じました。

まちのだがし屋さん~わくわくがとまらない!~

2022年9月19日~2022年9月25日放送 
東北放送 ラジオ制作部 小野寺穂実

【番組概要】
宮城県の北西部にある加美町中新田地区には、石畳道路が特徴の「花楽小路(からくこうじ)商店街」があります。商店街の一角にある駄菓子屋さん、『だがし屋竹とんぼ』が今回の舞台です。店主の野泉マヤさんが、商店街に少しでも楽しいお店を、という想いを持ち、2年前にオープンさせたこのお店。6畳ほどの小さな店内には、チョコレートや、グミ、ガム、ゼリーなど、およそ130種類の駄菓子が、棚いっぱいに並んでいます。お店が開いているのは、平日の3日間と土曜日の、おやつの時間帯。もらったお小遣いを握りしめて楽しみにやってくる小さな子どもたちや、駄菓子ファンだという大人たち、子どもや孫との駄菓子選びを楽しみにやってくる人々など、お店に訪れるお客さんは様々です。ですが、どのお客さんにも共通しているのが、駄菓子を選ぶ時の"わくわく"する気持ち。今日はもらったお小遣いの中で何を買おうかな、あの子はきっとこの駄菓子を喜んでくれる・・・それぞれの"わくわく"が生まれる場所が、『だがし屋竹とんぼ』です。そんな"わくわく"を、店主の野泉マヤさんの想いとともにお伝えします。色々な世代の人が集まり、たまり場となっているこの場所こそ、まちの風物誌です。

【制作意図】
『だがし屋竹とんぼ』を初めて訪れた時、今日は何を買おうかなと楽しみにお店までやってくる子どもたちの軽い足取り、そして握りしめたお小遣いを計算しながら慎重に駄菓子を選ぶ様子を見かけました。そして、今日はこれを買ったんだよ!と最後に笑顔で教えてもらいました。このお店には、"わくわく"があふれている、と感じました。販売されている駄菓子は10円から、高くても100円程度です。決して高価なものではありませんが、このお店は日常の小さな楽しみや喜びを与えてくれる、とても貴重な存在なのだと思い、取材を決めました。何か形に残るモノをつくっている音ではなく、日常にあふれる小さな"わくわく"を音として表現したらどうなるのか。私が『だがし屋竹とんぼ』で出会った"わくわく"たちを、詰め込みました。

【制作後記】
『だがし屋竹とんぼ』を取材するにあたり、お店がある「花楽小路商店街」についても少し調べてみました。この花楽小路商店街は、まちの顔であり、コロナ禍に入る前には、四季ごとにお祭りやイベントが開催され、賑わっていたそうです。ところが、コロナが拡大して一気にまちの賑わいが消えてしまいました。そんな中でオープンした『だがし屋竹とんぼ』。店主の野泉マヤさんは、オープン時のあいさつ回りの時に、商店街の他のお店の方々から、こんな時でも新しいお店ができて嬉しいと、エールをもらったそうです。『だがし屋竹とんぼ』という場所が、これからもたくさんの"わくわく"を生み出す場所として、花楽小路商店街を、そして加美町を盛り上げる、そんな拠点となればいいなと思います。

伝書鳩がつなぐ未来

2022年9月12日~2022年9月18日放送 
山梨放送 ラジオ局ラジオ制作部 秋山幸江

【番組概要】
山梨県、南アルプス市出身の大学生 中嶌健さんは、鳩の帰巣本能を活用して災害時の通信や運搬手段として役立てる『災害救援鳩』研究に取り組んでいます。自宅ではレース鳩の趣味を持つ父・健司さんとともに100羽以上の鳩を飼い幼いころから鳩と向き合ってきました。生き物が持つ力を見直し、その可能性を見出すべく研究に打ち込む健さんと応援する父・健司さんの姿を追いかけています。

【制作意図】
なぜ、若者である健さんが『伝書鳩』に注目したのか。その思いに興味を抱き企画しました。
何十羽という鳩の鳴き声や、羽ばたく音にのせて研究への熱い思いと、鳩の魅力をお届けしたいと思います。

【制作後記】
健さんは東日本大震災や西日本豪雨など、災害が起こるたびに「ひとのために自分に何ができるのか」
と考えた事が、研究へ挑む動機の一つだったといいます。鳩一羽移動する時も、包み込むように持ち上げる健さんの人間性の中に自然や他者と共存していくためのヒントを感じました。



そろそろ帰ろうか~ 夕暮れの町に響く愛の鐘(防災無線)

2022年9月5日~2022年9月11日放送 
信越放送 ラジオ局 編成制作部  伊藤俊道

【番組概要】
あなたのお住まいの地域では 夕方どんなメロディーが流れていますか?「夕焼け小焼け」「家路」「赤とんぼ」?!数多くの災害に見舞われてきた歴史から、日本各地に設置されている防災行政 無線。屋外スピーカーは各所に設置されており、災害に関する情報や避難情報、人命に関する情報など、住民に知らせる重要な役割を果たしています。夕方のメロディーは、その機器が正常に作動するか、チェックをかねて毎日流されています。そしてそこには、市町村ごとにこだわりがあります。出身や所縁のある著名人が作った曲が採用されていたり、公募によって採用された曲が流れていたり…。番組では、そんな防災行政無線のメロディーを追いかけながら、そこに住む人々の生活に寄り添った背景を切り取り、災害が多発する昨今、9月は防災月間という事もあり、防災行政無線への関心を少しでも高めてもらいと願い制作しました。

【制作意図】
3年目のコロナ渦…自宅でのリモートワークをしていると、ある日、これまで耳に止まらなかった野外スピーカーからのメロディー。それは、地域に情報を促す防災行政無線からのの音でした。子供の頃に聞いた記憶がありますが、大人になった今は、会社にいることが多く、ほとんど耳にも止まっていませんでした。日中自宅にいると、熱中症への警戒メッセージや詐欺に注意のアナウンス。毎日様々な情報が発信されていました。そして夕方には、何かホッとする“一日お疲れさまでした”と言っているような温かみのあるやさしいメロディが流れていました。そこで、他の地域ではどのようなメロディーが流れているのか?平日のラジオ番組の中で「わが町のチャイムはどんなものが流れているか」リスナーから情報を寄せて頂き、中でも個性の地域をセレクトし今回の番組で放送しました。

【制作後記】
2019年の台風19号災害で長野県は大きな被害がありました。千曲川の水が堤防を越える中、住民に危険を呼びかけたのが地元の消防団員が鳴らす半鐘の音でした。5分間鳴らし続けられた半鐘の音を聞き、お年寄りや海外出身の人達は「ただ事ではない」ことを察知し避難しました。緊急時の伝達手段として、情報の受け手側の能動的な操作を伴わず、必要な情報が届けられるようにと設置された防災行政無線の屋外スピーカー。時代とともに求められる情報の伝達方法は、様々に変化していきますが、各地域の特性に応じ、複数の情報伝達手段を組み合わせることにより、より多くの住民へ確実に情報を伝えることが重要だと思い知らされました。災害が頻繁に起こる昨今、防災行政無線から今後サイレンや危険を知らせる音ではなく穏やかな、故郷の情景に溶け込み親しまれるメロディーが流れる存在としてこれからもあり 続けてくれることを願います。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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