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2020年8月20日 (木)

天然ドジョウのつぶやき

2020年8月24日~2020年8月30日放送 
山形放送 制作部 結城義則

【番組概要】
2020年夏―。辺りがまだ薄暗い午前4時半。山形県山辺町の水田わきの水路に、多田秀逸さん(69)の姿が…。水の流れの中から金網の仕掛けを引き上げました。ドジョウを捕るための仕掛けです。「ドジョウは少しだけ、ほとんどがハヤの稚魚」。残念ながらこの日は〝不漁〟でした。自然豊かな山辺町に生まれ育った多田さんはコメの専業農家です。おいしいコメ作りの傍ら、ドジョウ捕りも続けていますが、最近はその姿がめっきり減ってしまったと言います。ドジョウの棲み処の水路が、圃場整備に伴って土からコンクリートへと変わったことなど、生息環境が変化したためではないかと多田さんはみています。量は減っているものの、多田さんが捕るドジョウは町内の産直施設の目玉商品です。今シーズンも待ちかねた常連客が買い求めに訪れていました。そしてその売り場にいた多田さんは、客にこう述べていました。「たくさん食べてください、貴重品だから。来年は(ドジョウ捕り)止めてしまうかもしれない…捕れなくて…」。

【制作意図】
多田さんのドジョウ捕りを初めて取材したのは6年前、2014年の夏です。当時は、縦40センチ、横30センチほどの大きさの袋状の仕掛けいっぱいにドジョウが掛かっていましたが、今回の取材では計5か所の仕掛けの設置場所すべてで、〝大漁〟の場面に出くわすことはできませんでした。それでも、ハヤやナマズなどの稚魚と一緒に、例年よりも数は少ないながら、天然ドジョウの姿は確認しました。そして一連の取材のなかで気になったのが、ドジョウの群れから聞こえてくる〝音〟です。「ひょっとしたらドジョウの鳴き声…?」そんな思いを抱きつつ、専門家に聞いたところ、ドジョウは群れのなかで身を隠そうとする場合などに〝音〟を出すことが分かりました。環境の変化とともにドジョウの姿が年々減っているという現状と、まるで何かをつぶやいているようにも聞こえるドジョウの〝音〟を広く伝えたいと思いました。

【制作後記】
多田さんは、天然ドジョウを捕まえた後、水槽のなかに2、3日入れて〝泥〟を吐かせ、
町内の産直施設に出荷しています。毎年、楽しみにしているという常連客は「臭みがない」と
語り、おすすめの食べ方はゴボウと一緒に天ぷらにすること。家族全員で晩ごはんの
おかずとして食べていると教えてくれました。一方、多田さんはどんな食べ方を
しているのか尋ねたところ「ドジョウはまったく食べない。捕るのが専門」という答えが
返ってきました。ドジョウ捕り名人であっても、その〝味〟についてはあまり得意ではない
ようでした。

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半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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