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2020年8月20日 (木)

津田演奏堂ラストソング~111年のありがとう

2020年8月31日~2020年9月6日放送 
南海放送 メディアセンター 植田 竜一

【番組概要】
「歳には勝てない…」
創業111年を迎えるレコード店・津田演奏堂が6月30日に閉店しました。名だたる演歌歌手が来店し、街頭キャンペーンやレコードの手売りなどをおこなってきた愛媛・四国を代表する老舗店です。
最終日の津田演奏堂に密着取材し、聞こえてくるすべての音を録音しました。4代目店主の津田安俊さんと別れを惜しむお客さんとの会話、店を閉める最後の瞬間のシャッターの音…。
そして、閉店間際に店主の津田さんがとりだしたのは傷だらけのレコードでした。70年前の電気蓄音機の針を落とした瞬間、店内は時空を超えた雰囲気に。津田演奏堂の最後の1曲「ラストソング」とは―。

【制作意図】
創業111年の音を残さなければもう二度と私たちの耳に届くことはないということ。また、レコード店と地方都市を取り巻く環境について改めて考えてみたかったこと。この2つの動機が津田演奏堂の最後の瞬間を記録しようと思ったきっかけです。そして同時に、店内に置かれている電気蓄音機を使ってかける最後の1曲は何が選ばれるのか知りたかったという思いもありました。何よりも普段から、私たちを取り巻く環境の変化、つまり人口減少が進む地方に住むこととCD・レコード離れが進む音楽シーンに何か重なるものを感じていました。それはいったい何なのか。
津田演奏堂を結節点として考えてみようと試みました。

【制作後記】
チリチリとした傷だらけのレコードが70年前の電気蓄音機によってノイズだらけの音色として店内に響き渡る。現代の高音質に慣れた人の価値観からすると、ともすれば「不良品」と言われるレベルです。店主の津田さんは「人は何もかも高音質を追い求めて柔らかさ、あたたかみを忘れた」と寂しげに語ってくれました。一方で、津田さんの言葉は音楽の高音質化だけでなく、便利や合理化を追い求める私たちの日常生活全般に言えることなのではないのか。
津田演奏堂の「不良品」レコードによるラストソングをどうとらえるか。改めて考えさせられます。

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半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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