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2020年3月 2日 (月)

佃煮、時代を歩く

2020年2月24日~2020年3月1日放送 
秋田放送 ラジオ制作部 利部昭勇

【番組概要】
男鹿半島の付け根にある八郎潟。岸辺には佃煮屋が点在します。潟から獲れるワカサギやシラウオ、フナなどを材料に、明治から佃煮作りが盛んに行われてきました。深い雪に閉ざされる秋田では、冬期間の保存食として重宝されてきのです。しかし、平成に入った頃、食生活の変化が佃煮を直撃。柔らかい物を好んで食べる時代の人たちから、そっぽを向かれてしまったのです。起死回生をかけて編み出したのが「ワカサギの唐揚げ」。食感を工夫した新しい佃煮に売り上げが回復しました。時代は平成から令和へ。秋田の佃煮は新たな危機を迎えています。立ち向かうのは、家業を継ぐ決意をした若手経営者たちのグループ「スメルト」。佃煮の、さらに新しい愛され方を模索し始めました。

【制作意図】
地方の時代と言われながら、その実感は皆無と言っていいのが現実。人口流出に歯止めは掛からず、地方には次代を託せる人が激減するばかり。「国破れて山河あり」と言いますが、冗談ではありません。しかし、一方で、故郷の山河を、人を、暮らしを、生業を、文化を愛で、地方再生に立ち向かおうとする人材が、わずかずつ増えています。冷え切った地方経済の中で歩く道は険しい。しかし、彼らの視線の向こうには、はっきりとした「何か」が存在しています。地方で生きるということ。そのために今、起こすべきアクションは?全国に普遍的にある、この問題を、秋田のソウルフードのひとつ、佃煮を通して見つめたいと思いました。

【制作後記】
深い雪に閉ざされる地域では、冬に動物性蛋白質をいかに確保するかが大きな課題でした。その解決策のひとつが魚介の佃煮です。また、戦争中は戦地に赴く兵士たちの保存食として注目され、一般では入手困難な砂糖が、材料として佃煮屋に優先的にまわされたという証言もあります。 佃煮が命をつなぐ主役だった時代が間違いなくありました。今、佃煮は主役になりえないかもません。しかし、この文化が無くなることはないでしょう。なくても生活に支障はないが、あった方が、どこか豊かになれる。
令和の時代になり、佃煮は、そんな存在になっていくのでは?そして、金銭だけではなく、人としての豊かさを失わないために立ち上がった、佃煮店の若手経営者たち「スメルト」の活動を、これからも追い続けようと思います。

 

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半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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