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2019年5月30日 (木)

平和を奏でる音色 ~カンカラ三線からサンレレへ~

2019年5月20日~2019年5月26日放送 
ラジオ沖縄 制作報道局 報道部 杉原 愛 

【番組概要】
三線は沖縄の人々=うちなーんちゅにとって、ただの楽器ではない。何もかも失った戦時中、うちなーんちゅは悲しみや苦しみを紛らわせるため、空き缶やパラシュートの紐など、ありあわせの材料で“カンカラ三線”を制作した。切なくも力強く響くその音色に人々は生きる希望を託した。カンカラ三線の存在は、過去の沖縄の歴史も物語っている。
一方で、今の時代だからこそ誕生した新たな三線もある。ハワイの「ウクレレ」と沖縄の「三線」を融合させた楽器 ”サンレレ” だ。全く異なる2つの楽器が見事に融合して癒しの音色を奏でるサンレレには、様々な文化を受け入れ、世界とつながり独自に発展してきた沖縄の姿が重なるようにも見える。過去を語り継ぐカンカラ三線の音色と平和を喜び歌うようなサンレレの優しい音色。
どちらにも平和を祈る沖縄の心が宿っている。


【制作意図】
三線には“心”が宿ると言われる。それは、時代の流れと共に 常に三線が人々の心に寄り添ってきたからだろう。戦時中に人々の心を支えた「カンカラ三線」は、うちなーんちゅの悲しい歴史を一緒に乗り越えてきた三線。平和な時代の沖縄に生まれた「サンレレ」は、異文化を受け入れ、新たな時代を切り開いてきたうちなーんちゅのおおらかさを表現する三線。生まれた時代は違えど、そこには平和を愛するうちなーんちゅの精神が息づいている。それぞれの三線が奏でるうちなーんちゅの思いに耳を傾けてほしい。


【制作後記】
「カンカラ三線は、本来はあってはならなかったもの」という言葉が忘れられない。戦争を体験した父に収容所での経験を聞いて育ったという、三線店を営む照屋勝武さんの言葉だ。戦時中、何もかも失った最悪の状態でうまれたカンカラ三線は、平和な時代には弾かれるはずのなかった楽器だ。でも、だからこそ、カンカラ三線が奏でてきた当時の人たちの思いは未来にも語り継ぐ必要があると感じる。一方で、サンレレは全てを包み込むような平和を象徴するような音色だ。カンカラ三線の音色には苦しい状況にも前を向き、立ちあがるうちなーんちゅの強さが。サンレレの音色には異なる文化を受け入れて独自に新たなものを生み出すことができるうちなーんちゅの寛容さがあふれている。どちらの音も、次の世代に残していきたい。

 

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半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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