すべての願いがかなう杜(もり) ~守り続ける王の舞(おのまい)~
2017年5月29日~2017年6月4日放送
福井放送 ラジオセンター制作担当 松村和也
【番組概要】
福井県美浜町の彌美(みみ)神社。地元の皆さんに「すべての願いがかなう杜」として愛される場所です。その彌美神社で毎年5月1日に開かれるのが例大祭です。この例大祭では18の氏子集落が色々な形で奉納する儀式があります。そのうちの一つ、麻生(あそ)地区が奉納するのが「王の舞(おのまい)」です。王の舞は平安末期に宮廷で誕生したといわれる舞で、今も美浜町のある福井県若狭地方に数多く残る伝統芸能です。いつからこの彌美神社の例大祭で奉納されているか不明ですが、麻生の皆さんにとって「王の舞」を舞うことは一人前の男になった証しで、誇りに思いその体験談を代々語り受け継がれてきました。元々は麻生地区の独身男性が舞うとされてきた麻生の王の舞も近年の人口減少、少子化で舞い手不足は深刻です。 一度舞った男性でも2度舞が当たり前になっています。麻生の皆さんの願いはこの「王の舞(おのまい)」を後世に残す、そして、子供たちに地元の祭りを誇りに思ってほしいという、秘めた熱い想いをお送りします。
【制作意図】
福井県や美浜町の無形民俗文化財に指定されている麻生の王の舞が近年の人口減少や少子化で舞い手不足と聞き取材を始めました。そこで聞けたのは「やめるわけにはいかない」という、秘めた熱い想いでした。都会に比べればまだましだと思いますが、地域の関係は希薄になりつつあります。しかし、地域の皆さんが集まるこの彌美神社の例大祭は男性は一度は舞った誇りである「王の舞」を見に行き、女性は子供たちに見せないといけないという、地域独特の使命みたいなもの感じました。そんな地域の皆さんの秘めた熱い想いを感じていただけたら幸いです。
【制作後記】
彌美神社は普段は本当に静かでのどかな場所です。しかし、その静かな場所というのは、近年の人口減少や少子化を表すと言えるかもしれない。そんな思いで5月1日の例大祭を取材するとあの静かだった場所が人でにぎわう場所に。地元の方に聞くと、彌美神社は大切な場所なんです。困ったときの神頼みではないですが、神社仏閣は心のよりどころで、彌美神社は「すべての願いがかなう杜」といわれる場所なんだと感じました。そして、その場所に奉納する「王の舞(おのまい)」は地元の誇りで「残すべき」というより、「やめるわけにはいかん」という一つ上の秘めた熱い想いを感じられました。
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