急こう配を駆けあがれ 高野山への登山鉄道
2015年5月4日~2015年5月10日放送
和歌山放送 報道制作局 報道制作部 花井歩高
【番組概要】
弘法大師・空海が開いた高野山は今年で開創1200年。木立に囲まれた標高およそ900メートルの霊場に向かう南海高野線は、急こう配とカーブが続く全国有数の登山鉄道のひとつ。新緑に囲まれた春の沿線風景を音で表現する。
【制作意図】
世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」登録から10周年を迎えた和歌山県高野町高野山。世界的な旅行雑誌「NATIONAL GEOGRAPHIC TRAVELER」が「2015年に訪れるべき場所 世界のベスト20」に日本でただ一つ、この地を選んだという。去年1年間の和歌山県への外国人宿泊客数が初めて30万人を突破し、欧米からの旅行客の7割が高野町で宿泊したそうだ。古都の京都や奈良にはない「何もないところ」が人気を集める要因のひとつと分析する人もいる。今回取材した南海高野線は大阪のベッドタウンとして沿線は発展し、府県境の橋本市までは通勤通学客で混雑するが、この先は様相が一変する。紀ノ川を渡り、真田幸村ゆかりの九度山町、そして高野町へ最大50パーミルというカーブの続く急こう配を、車体をきしませながら最高時速33キロの速さで登っていく。開創1200年の記念行事の人気で高野山に向かう車内は混雑する一方、クルマ一台がやっと通れるような山中にある途中駅はゆっくりとした時間が流れている。昭和初期から変わらない山岳区間の風景を切り取った。
【制作後記】
ジオラマの中を走っているような風景は車内から眺めるにはよいが、録音のために沿線に近づくのは意外と難しい。観光バスが行き交う国道から、地元の人だけが通る細い道を入り集落へ。さらに登山道に分け入っていくと、薄暗い谷あいに真っ赤な鉄橋が姿を現した。竣工は昭和2年。トンネルを出てすぐに鉄橋を渡り、またトンネルへ。通り過ぎる一瞬をとらえたくて、マイクを向け続けた。
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