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2007年9月10日 (月)

紀伊半島・熊野に、日本ミツバチと暮らす

和歌山放送 報道制作局 土橋 進

紀伊半島の南端、世界遺産「熊野」の山中を太平洋に流れ下る、日本最後の清流、古座川流域には、伝統的な暮らしが残っています。

その清流の支流一体には今も、在来種の「日本ミツバチ」の習性をうまく利用しながら、味わい深い「和蜜」を採取している人々が暮らしています。

古座川町宇筒井に奥さんと2人で暮らす、前進一郎さん72歳は、冬場は狩猟家として、熊野の山中でイノシシやシカを追っています。相棒は紀州犬のルーツと言われている「熊野地犬」11頭です。

「日本ミツバチ」の世話は春先の「ゴーラ」と呼ばれる巣箱の制作と設置、秋の分蜂(巣別れ)のための巣箱の設置などが主で、後はミツバチが山々から集めてくる和蜜を待つだけです。

そして夏のお盆が過ぎる頃、前年に越冬して巣箱一杯に溜めた蜜いっぱいの巣を半分だけ切り取ります。後の半分は次の年への越冬のための食糧として残しておきます。

「ミツバチは子どものようにかわいい」と言う前さんの自宅はいつも開け放たれています。そこに「日本ミツバチ」が我が家のように入ってくることもあります。

そのとき、前さんは蜂が自分で出て行くまでじっと待ってやります。「昔の日本人は、このミツバチのように良く働いたものなんだが…」と、ミツバチを通して昨今の世相をチクリと刺す前さんです。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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