べっこう夫婦と海の宝石
2025年1月20日~2025年1月26日
長崎放送 報道メディア局 報道制作部 戸島夢子
【番組概要】
江戸時代、日本で唯一貿易の窓口だった長崎の出島に、中国より伝来した「長崎べっ甲」。
しっとりとした艶、空気のような軽さ、深みのある光沢。その美しさから、「海の宝石」と呼ばれ、国の伝統工芸品にも指定されています。その一方で、ワシントン条約によって1993年にタイマイの輸入が禁止されると、べっ甲業は材料不足に加え後継者不足にも頭を抱えることとなりました。
全盛期には200社ほどあったべっ甲業者も、今では20社ほど。「長崎べっ甲」の歴史と技術を守り継ぐべく、日夜作業台に向かう仲睦まじい職人夫婦を取材しました。
【制作意図】
長崎の港には、大きな客船が毎日のように寄港し、海外の旅行客で賑わっています。かつて長崎土産として人気を博した「長崎べっ甲」は、”絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約=ワシントン条約”により国外への輸出入が禁止されました。海外旅行客がお土産として「長崎べっ甲」を持ち帰ることも、原材料となるタイマイの甲羅を海外から仕入れることも出来ないのです。
原材料は残りわずか。後継ぎも業界全体で減少していることを知りました。べっ甲業界は大きな問題に直面しています。「長崎べっ甲」がこれからも長崎の伝統工芸品として残り続けてほしい、
少しでも多くの人にべっ甲の良さを伝えたいと思い制作しました。
【制作後記】
取材した「有限会社 安田 安龍工房」の二代目・藤原慎二さんと佳美さん夫婦。おふたりともとても明るく、終始笑いの絶えない現場でしたが、べっ甲の話となると真剣な表情に。苦境の中にあっても、べっ甲への愛と情熱、新しいデザインを創り出す探究心を忘れずにお持ちなのだと、私も胸が熱くなりました。べっ甲細工職人とそれを支える方々に守られてきたこの技術が、これからも10年、20年と受け継がれていくこと、”長崎べっ甲”が末永く愛される長崎の工芸品であることを心から願っています。
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