鬼師~3代目の挑戦
2022年12月12日~2022年12月18日放送
熊本放送 ラジオ制作部 日野 禎
【番組概要】
1000年以上の歴史を持ち、神社仏閣をはじめ、日本の家屋や家族を守ってきた鬼瓦。その鬼瓦を伝統の技でつくり出す職人が「鬼師」です。熊本地震で大きな被害を受けた熊本城。その大小の天守閣に、新しいしゃちほこを復元し、熊本復興のシンボルとして県民を元気づけたのは鬼師の藤本さん親子です。神社仏閣の全国的な減少の影響を受け、職業としての「鬼師」も存在の危機にあります。
そんな中息子で3代目、気鋭の34才の若者、藤本修悟さんは、一旦は別の道に進みましたが、職業として成り立つような新しい「鬼師」を目指し、跡を継ぎました。今新しい商品として、ミニチュアのしゃちほこの置物の他、瓦のアロマキャンドル等日用品も制作しました。また新たにペットの日よけなど試作品にも取り組みます。跡を継いで10年、理解し応援してくれるサポーターも増えてきました。一方で、職業としての「鬼師」をPRし、その裾野を広げていく活動も。近くの美術館を借りて、「紙粘土教室」を開いています。将来の子供たちの「鬼師」としての可能性にも目を向けているのです。 藤本修悟さん。そのチャレンジと模索の日々は続きます。
【制作意図】
私たちの生活にも深く関わってきた寺院・神社。その急激な減少に大きな影響を受けている職業の一つが「鬼師」です。お寺や神社の独特な「鬼瓦」は、専門にする瓦職人「鬼師」でないと作ることが難しいのです。日本の歴史を刻んできた寺社・仏閣。そして名城の数々。日本独特の建築は、そこに深い意味があり、細部に渡って表現されている芸術作品です。あの名城「熊本城」の天守のしゃちほこを制作した藤本さん親子ですら、この先これまでの様な仕事があるとは限りません。大変厳しい状況なのです。業界では、九州最後と言われている「鬼師」3代目の藤本さんの新しい取り組みを少しでも知って欲しい。そして「鬼師」という存在も知って欲しい。応援したいという気持ちはもちろんあります。今消滅の危機にある寺社仏閣。そして「鬼師」。日本の伝統文化が消えようとしている現実。このままで本当にいいんですか?そんな思いを持ち、制作しました。
【制作後記】
自分も18代、室町時代から続く寺院の次男として生まれ、お寺で育ちました。思い入れのあるお寺や神社が消滅の危機にある、もちろん他人事ではありません。そこで出会ったのが「鬼師」藤本さん親子です。34才 3代目の修悟さんのその言葉や作り上げた作品はとてもインパクトがありました。新しい「鬼師」を作り上げる。頼もしいと感じました。うまく焼いた瓦は、200年も300年も持つと言われています。土で出来ていて、エコにも優しく今のSDGsにも合ったものです。「鬼瓦」が日本の伝統文化だけでなく、アロマキャンドルなど日常品として、海外にも広がっていく。そんな日も近いと感じました。そして、今後海外から多くの旅行者が来る中で、芸術品としての「鬼瓦」に目を向け、再評価されていく。そんな近い将来がやって来る、そんな期待もしています。
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