おらが湊鐡道夫婦(めおと)デュオ
2022年7月18日~2022年7月24日放送
茨城放送 編成事業部 菊地真衣
【番組概要】
茨城県ひたちなか市を走る第3セクターの『ひたちなか海浜鉄道』。かつては湊鐡道としてこの地で歴史を重ねてきました。勝田駅から阿字ヶ浦駅までの11駅14.3キロを結ぶこの路線は、観光客や地域の人たちの足として親しまれています。『私たちの湊線を守りたい』と立ち上がり、15年、開業当時の面影が色濃く残る那珂湊駅の待合室のベンチで、毎週末ギターを手に歌い続けるみなと源太さんは、妻のゆうこさんと共に息の合った演奏とハーモニーで駅利用客を和ませています。上下列車が来るまでのつかの間ステージで披露されたのは、源太さんの幼少期の湊線での思い出を歌ったオリジナルソング『季節の風』、中島みゆきの『ホームにて』、そして、阿字ヶ浦から海浜公園までの延伸の願いを込めて作られた『未来の街まで』の3曲です。廃線危機から鉄道を支え、行きかう駅の利用客を歌声で迎え、歌声で送りだす、そんなあたたかな地元の音をお届けします。
【制作意図】
春夏秋冬多くの観光客が訪れるひたちなか市。観光する人たちにとって欠かせない存在でもあるひたちなか海浜鉄道は、『ディーゼルカー1両編成』、『車両がホームにやってくるのは30分に1本』…といわゆる典型的なローカル線。昨年には国から延伸許可が下りるなど時代に逆行し勢いのある路線と言えます。しかし、1913年の開業以来ずっと順風満帆だったわけではありません。モータリゼーションの流れなどを受け、経営努力を行うも一時は廃線の危機に。さらに、その後も東日本大震災や新型コロナウイルスなど、さまざまな局面を乗り越えてきました。現在のひたちなか海浜鉄道があるのは、『どうにかして盛り上げたい、守りたい』と、それぞれにできることを探しながら熱い想いを注いできた地元の人たちの存在無くして語れないと感じ、今回の企画を考えました。みなと源太さんとゆうこさんの演奏は、15年同じ場所で歌い続けていることで、その『音』自体が地元の名物となっています。ちなみに3曲目の歌詞にある『いやどうも』『かえってどうも』は茨城県内で交わされる挨拶の言葉です。まだまだ続くコロナ禍の中、ラジオを通して届けることで、その音にいつか会いに来てほしい、という願いも込めて制作しました。
【制作後記】
私がみなと源太さんと初めてお会いしたのは1年前。私自身車ユーザーのため鉄道を利用する機会が少なく、初めて那珂湊駅での演奏を目の当たりにしたときはあまりのあたたかさに心が震えたのを覚えています。また、昨年も録音風物誌の制作を担当しましたが、もし今年も機会があるのなら、絶対みなと源太さん夫婦を取り上げたいと考え、企画を温めていました。コロナ禍で演奏することもままならなかったときもありましたが、今年のゴールデンウィークには蔓延防止等重点措置も解除され、県内外からひたち海浜公園のネモフィラを目当てに、多くの観光客が訪れ、源太さん自身も演奏にも力が入っているようでした。収録を行ったのがまさにこのGW期間中で、待合室にも老若男女多くの人がおりました。ひとたび演奏が始まると、スマホに目を落としていた人は顔をあげ、ヘッドホンをしているひとは外して聴き入る様子も見られました。素材編集に関しては、利用客の話し声、切符売り場の小銭の音など、景色がわかるように録音を行いました。また、このあたたかい風景と、この路線が未来へ続いてほしいという思いを、ステレオ収音マイクで録った走り出す列車の音を最後に使用することで表現しました。
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