春、水深200mへ祈る。
2022年5月9日~2022年5月15日放送
秋田放送 編成局ラジオ放送部 武藤美結
【番組概要】
3月下旬、秋田県男鹿市にある男鹿水族館GAOでは、稚魚を海に放流する体験会が行われます。放流されるのは、秋田の県魚「鰰(ハタハタ)」です。日本海で雷が轟く冬の初め頃、突如大群で漁港に押し寄せる鰰は、「神様からの恵み」とも考えられていました。秋田県民が古くから知恵を絞り、色々な食べ方を編み出してきた魚です。その鰰に危機が迫っています。かつて2万トンもの漁獲量を誇った秋田県ですが、2021年度は300トン以下。苦渋の決断で“禁漁”が行われた、30年前と同じ状況なのです。番組では鰰が直面している現状と、稚魚を手塩にかけて育てる飼育員の想い、そして稚魚と向き合う子どもたちの様子などをお届けします。
【制作意図】
鰰は冬の風物詩として取り上げられることも多いのですが、その漁獲量や景色を守るべく、春に稚魚を放流している人たちがいることを、知らない方も多いのではないでしょうか。私もそのうちの1人でした。今回、水族館で行われている「稚魚放流体験」を取り上げることで、鰰の現状やなぜこの時期放流するのか、稚魚を手塩にかけて育てた飼育員の想いや、子どもたちが学び体験する様子を伝えたいと考えました。また、鰰の稚魚は人工授精で生まれ、餌を与えられて育ち、多くの人の手により海に帰されます。その稚魚が2年後、大きくなって秋田に帰ってきた時、私たちはその命を頂くかもしれません。巡る命についても考えていただけたらと思います。
【制作後記】
ハタハタ漁の歴史や調理法、漁の様子や禁漁について調べていくうちに、秋田では鰰に対して熱い思いを抱く人が昔から多かったのだと改めて感じました。また餌やり体験を取材し、稚魚が生きているプランクトンを食べる様子を観て、命の尊さや儚さを感じました。私自身にとっても、飼育員や参加者と共に「秋田の鰰」を考える、良いきっかけになりました。
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