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2019年10月15日 (火)

生活をつなぐ海の道 高知県営渡船に乗って

2019年10月14日~2019年10月20日放送 
高知放送 ラジオ編成制作部 野口賢明

【番組概要】
太平洋に面した、高知県高知市のほぼ真ん中にある浦戸湾。浦戸湾では地域の人たちが利用する高知県営渡船がいまでも運航を続けています。その昔は手こぎ船などで湾を行き来していましたが記録を辿ると、エンジン付きの今の県営渡船の形になったのはおよそ70年前。以来、湾の対岸にある造船所に向かう人や、買い物に行く人、また通学に使う人など、地元の人たちの生活を支えています。しかもこの渡船の航路は、全国的にも珍しい、海の上を走る県道に指定されています。また四国霊場八十八カ所を歩いて回るお遍路さんにとっても最短のルートとなります。ところが、今から20年ほど前、湾の入り口にかかる橋が無料化されたことに伴い、一時は航路の廃止が議論されたことがありました。しかし航路を残してほしいという地元の人たちの願いによって航路は存続することになりました。地元の利用者やお遍路さんの声を聞きながら、海の道を穏やかに走る高知県営渡船を取材しました。

【制作意図】
現代の車社会において、交通手段の効率化というのは行政にとっては大切な課題だと思います。しかし、湾の対岸に渡るために最短距離で、しかも無料の渡船をこれまで日常的に利用していた人たちが、湾の出口にかかる橋が無料化されたからといって、その橋を渡ることは、非常に遠回りであり、車を持たない高齢者など交通弱者にとっては難しい現状があります。行政が運航するということは、税金を投入することになりますが、地域の人たちの足として、また四国の文化である八十八カ所巡りの歩き遍路にとって大切な意義をもつ高知県営渡船の日々の様子を伝えたく取材しました。

【制作後記】
県営渡船は平日は1日20便運航し、船長と船員2人のあわせて3人で運航しています。運行自体は日々淡々としていますが、お客さんを安全に運ぶという海の男の誇りを持ちながら業務にあたる寡黙な姿が印象的でした。また渡船を利用するお客さんは、ほぼ毎日利用している人が多いようで、生活の一部として欠かせないもののように感じました。税金を使っての運航とはいえ、地元の人たちにとっては無くてはならないものであることに違いはありません。今後、過疎高齢化などで、渡船の利用者が減少していくことも考えられます。例えば船を小型化したり減便するなどして運航形態を変える、また要望があれば湾内を巡る観光遊覧船のような使い方も考えられます。いずれにしても地域の足として残していくことが大切ではないかと感じました。

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半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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