心を紡ぐ 糸車
2012年5月14日~2012年5月20日放送
山口放送 ラジオ制作部 大谷 陽子
綿から糸を紡ぎ、その糸で機を織る…。
今では、絵本の世界や伝統工芸などでしか見られなくなってきたことを、日々の生活の一部としてされている方がいます。
山口市の関よしみさん(77)です。一連の行程を拝見して、いかに手がかかる作業かとあらためて実感すると同時に、その糸の元の姿を見てさらに驚きました。糸の元は、タンスの中に眠っている布団です。
50年前、関さんが26才で結婚したときに、関さんの母親が嫁入り道具として持たせてくれたものです。当時は、嫁入り道具と言えば布団で、各家庭の母親が手作りしていたそうです。それも、1人分が敷布団2枚と掛布団2枚の計4枚、夫婦用と来客用の4人分で、計16枚も。
物の少ない時代に母親が苦心して作ってくれた布団を、使わなくなったからといってタンスの中に眠らせておくのはもったいない。捨てて燃やされてしまうなんて、もってのほか! そう思っていた関さんが出会ったのが、糸車だったのです。
母親の想いが詰まった布団は、糸となり、布となり、関さんの手で長女・己珠恵さんにピッタリのシャツに仕立てられます。これまで20年で、14枚の布団が200枚以上のシャツに生まれ変わりました。残る布団は、あと2枚。関さんは、母の想いを穏やかな時間の中で紡ぎます。