文化をつなぐ~番匠が伝える京の文化~
京都放送 ラジオ制作 永田 和美
正月2日、午前十時。
京都市右京区にある広隆寺で雅楽の演奏と共に、きやりうたが響き渡ります。番匠と呼ばれる大工達が昔から行っていた番匠儀式の一つ「釿始め」が行われます。
正月の仕事はじめとして一年の安全を祈願する儀式です。普段の動作を美しい所作に変えて厳かに行われます。
その中で歌われるのが、“きやり音頭”と呼ばれる大工達の労働歌。仕事をする際の懸け声が次第に歌になったもので、仕事の内容によって様々な種類があります。かつてはあちこちで歌われていたきやり音頭ですが、現在旋律として残っているものは番匠保存会が残している音頭を除いてありません。
音頭や釿始めなど昔から伝わってきた伝統を変えることなくしっかりと伝えていきたいと語る番匠保存会会長の木村忠紀さん。ご自身もこの道45年の大工です。大工の世界でも技術の伝承は行われています。例えば、丸い柱を作るとき。今では簡単にローターなどを使って加工できます。けれど基本は丸いものを作るときも一度8角形にして、必要な加工を行ってからその角を32,64角形と角を増やし丸にしていくんだとか。
こうした技術を最近は伝承されないままの人も多いそうですが、それでも木村さんは自分の師匠から教えられ、弟子へと伝えていきたいとおっしゃっていました。
こうした技術や伝統といった軸となるものは変えることなく伝えていきながら、次にすることは文化を創ること。伝統の上に文化があり、その文化は発展していくもの、という考えをお持ちで、その目には強い意志を感じました。