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2010年4月26日 (月)

波にふれる春のめぐみ

秋田放送 ラジオ局ラジオ制作部 利部 昭勇

日本各地、どこにでもある海草・あおさに、秋田県男鹿市の人たちは特別な想いを抱きます。「今年も春がやってきた」。
あおさ採りをする男鹿の人たちはみんな穏やかな表情です。

古くから漁業で生計を立ててきた男鹿の人たちは、大自然・海の厳しさをよく知っています。特に日本海特有の冬の荒波を。
人間など寄せ付けない漁場に漕ぎ出でる漁師たち。だからこそ、磯の春の使者、あおさに言葉ではいい表せない喜びを感じるのです。

そして、この喜びは先祖代々から伝わってきたものです。男鹿のほとんどの人たちは生まれて初めて採りにいった時のことを、どんなに年老いても鮮明に覚えているのです。

日常におささやかな場面から、まさに春の風物詩を味わえる番組になりました。

風物詩は特別なものではありません。人それぞれ、自分の生活の仲に、いろんな形で見出せるものではないでしょうか。

【制作裏話】
今年の秋田の冬は荒れに荒れました。どうやら季節の歩みがいつもより遅いようです。
秋田であおさが採れるのは、毎年だいたい3月下旬ですが、
「今年はちょっと遅れそうだぞ」…人生の半分以上を海と付き合ってきた漁師・白幡一政さんが言うことなので、制作日程が間に合うか少々あせりを感じました。
抜けるような青空と穏やかな海なのに、水中の生き物たちは敏感に
「春はまだ!」と悟っていたようです。

企画を立ち上げ、白幡さんとの初めての打ち合わせから、待って、待って、2週間後。ついに磯に出るチャンスが訪れました。

白幡さんは待ちに待った春の到来を。私は待ちに待った取材の到来を。おかげで「春を待つ喜び」はお互いに例年の倍以上になったようです。終始、テンションの高い取材でした。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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