響け、太鼓は我らの誇り
2024年4月1日~2024年4月7日放送
北陸放送 ラジオ開発部 中川留美
【番組概要】
能登半島の北部に位置する輪島市名舟町には、昔から人々が大切に受け継いできた「御陣乗太鼓」があります。450年以上にわたって受け継いできた太鼓は、名舟町に生まれた男子のみに打つことが許された門外不出のもの。太鼓を打つときにつける面は名舟町の先祖が手彫りしたものです。鬼のような面や亡霊、だるまなどの面をつけ、海藻の縮れたような髪を振り乱し、太鼓の独特なリズムと所作は異様な雰囲気と迫力を感じます。故郷に受け継いできた太鼓の音色、リズムは、聴いている人に感動を与え、明日を生きる勇気までも与えているように感じます。
【制作意図】
今年(令和6年)、元日に起きた能登半島地震で、能登に住む人々の中には故郷を離れ、見知らぬ遠い場所で避難生活をされている方々がいます。輪島市名舟町も集団避難となりました。被害が大きかった中で、名舟町の先祖が作った面や太鼓が無事だったという奇跡がありました。毎日のように観光客に向けて太鼓を打っていた日常が変わってしまいましたが、避難生活を続けながらも太鼓を打ち続ける姿が、聴く人の心に響き、気持ちを支えてくれるように感じ、制作しました。
【制作後記】
御陣乗太鼓を約一か月半ぶりに叩く保存会の練習を見た時に、一番初めに叩く太鼓の響きに、なぜか涙が溢れました。太鼓の音が身体の奥に響き渡り、その音が哀しみも喜びも、苦しさも全てを抱えたような魂の叫びのようにも感じました。「御陣乗太鼓」の精神は「意気地(いきじ)」にあると言います。逆境に立っても、くじけずに真っすぐ泥臭く生き抜く力をいうそうです。故郷を離れた人たちにとって、名舟町を復興にするには「御陣乗太鼓」の音が絶対に必要なんだと言っていた打ち手の方の言葉が心に残ります。どの人にもある故郷の音、聴く人の心に響く太鼓の音が前を向いていこうという気持ちにさせてくれます。
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