村に響く十日夜の声~子供たちが守る北相木村の伝統
2024年1月22日~2024年1月28日放送
信越放送 上田放送局 斉藤 美穂
【番組概要】
長野県南佐久郡北相木村は人口650人ほどの小さな村です。この村には、毎年旧暦10月10日の夜に行われる子供たちの伝統行事「十日夜」があります。(2023年は11月22日に行われました)十日夜とは、東日本に伝わる翌年の豊作を祈る収穫祭です。北相木村では子供たちが地中のモグラを追い払うため、大声で歌いながら、長さ60cm程のわら鉄砲と呼ばれるもので地面を打ち鳴らします。この伝統行事、北相木村では参加している子供たちのほとんどが村で37年前から受け入れに取り組んでいる山村留学生。地域の子供の数が激減する中、地区によっては様々な伝統行事が途絶えてしまうところもあります。十日夜も、取材した北相木村の栃原地区では一度途切れてしまったそうですが、山村留学生が参加する事で、行事を復活させることができました。村に暮らしてわずか数年という子ども達が、立派に「北相木っ子」として元気な歌声を届ける十日夜。ここで育った子供達はみんな地域の宝。その思いが地域をひとつにし、村の伝統をつなげています。
【制作意図】
少子高齢化で日本のお祭りや伝統行事は、今存続の危機に瀕しています。子供の数が激減している山間の地域ではどのようにして残しているのでしょうか。今回取り上げるのは、長野県の東部に位置する南佐久郡北相木村。面積の9割を山林が占める人口およそ650人ほどの小さな村です。そこで、細々と行われている伝統行事が「十日夜」。主役の子供たちが通う北相木小学校の全校児童は53名。その内、28名が移住を含めた地元生、25名が山村留学や親子山村留学で来ている子供たちです。山村留学は、北相木村では昭和62年にはじまった長野県が発祥の取り組みです。37年にわたる村の取り組みが伝統行事を受け継いでいくことにもつながっている貴重な事例といってもいいのではないでしょうか。「村で育った子供は、みんな地域の宝。」十日夜に交わされる子供たちと住民とのあたたかいやり取りを感じて頂ければと思います。
【制作後記】
私自身は、長野県の東信エリアを専門に取材しているリポーターです。今回北相木村での取材を通してはじめて北相木村の山村留学生の多さを知りました。北相木村にはコンビニもファミレスも信号もありません。そのような場所になぜ都会から?と不思議に思いました。親子で山村留学に来ている親御さんに尋ねてみたところ「何もないのが良い」のだそう。十日夜の日、村の人達と交わす子供たちの何気ないやり取りや、満点の星空を見ながら感動する純粋な姿を見て、都会にはない北相木村の豊かさや温かさを知る事ができたような気がしました。
「十日夜を続ける意味」を色々な人にインタビューしてみると、答えはバラバラ。「村に伝わる伝統行事だから」というより、「村の人が喜ぶから」や「村を元気付けるため」という答えがほとんどでした。子供たちの答えは「お菓子がもらえるから」がダントツ(笑)。「伝統行事」の一番の意味は「地域を一つにするためのもの」なのかもしれないと今回の取材を通して感じました。山村留学を通した体験が、長野県や北相木村を思う気持ちにつながってくれれば…と願います。
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