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2023年12月

2023年12月 7日 (木)

200円の人情弁当

2023年10月23日~2023年10月29日放送 
山口放送 ラジオ制作部 寺岡岳男


【番組概要】
山口県下松市の旗岡団地にある個人経営のスーパー「スーパーマルエス旗岡」
矢野忠治社長(72)は、200円のお弁当を作っています。原価180円、人件費は度外視です。
団地の人口も減少し高齢化も進んでいます。遠くの大規模スーパーに行く団地の人も多く、スーパーの売り上げも下がる一方です。しかし矢野社長は200円にこだわり、年金暮らしの人たちのために値上げをせず頑張っています。そんな矢野社長の、お弁当を通じて「団地の人たちのために」という気持ちを取材しました。

【制作意図】
「200円のお弁当」と、価格に注目されて過去に地元メディアが取材に訪れたこともあるスーパーマルエス旗岡ですが、最近SNSで矢野社長が「もう限界です」と発信されたことから、最近の原材料費の値上げがニュースでも多く取り上げられるなか、スーパーの経営が厳しいことは容易に想像できました。にもかかわらず値上げをせずに、あくまで200円にこだわる社長の意図は何か?と気になったことから、取材を行いました。

【制作後記】
何気なく矢野社長に「このスーパーが無くなったら困る人も多いでしょうから、50円程度は値上げされたらいかがですか?」と問いかけたところ「年金暮らしの人にとっては、50円でも毎日のことですからね」と返され、自分がまだ経験したことのない、年金生活でのやり繰りの厳しさに気づかされました。「200円のお弁当」という、価格のみに注目が行きがちですが、取材を進めるうちに「団地の住民の高齢化」「年金暮らし世帯の家計の厳しさ」「一人暮らし世帯の安否確認」「免許返納後の買い物難民」など、取材開始前には思い至らなかった、社会問題の数々が、団地の中のスーパーの状況に凝縮されていることに気づかされました。その問題の数々を、気負わず自分が出来ることを淡々と実施していく矢野社長の声から感じていただければと思います。

 

フクシマさん家の看板コロッケ

2023年10月16日~2023年10月22日放送 
秋田放送 編成局ラジオ放送部 高見 理於


【番組概要】
風待ち港とも言われるほど穏やかな港町、秋田県男鹿市船川港。海のすぐそばに今年で創業105年を迎える精肉店「グルメストアフクシマ」はあります。休日になると常連客から観光客までひっきりなしに訪れるこの店の一番人気は、肉ではなく手作りのコロッケ。材料はシンプルながらクリーミーな食感や味わいが人気です。作るのは、4代目の福島智哉さん。3代目の父と母とともに店をやりくりしています。番組では、おもわずよだれが出てしまうようなコロッケの音、4代目の葛藤やお店のこれからに密着しました。 


【制作意図】
スーパーマーケットや最近ではコンビニエンスストアでもお肉を購入できる時代。精肉店の数は全国的に少なくなってきているといいます。取材したグルメストアフクシマの3代目福島基秋さんも、「お肉だけではやっていけない」といいます。そんな厳しい時代、継がなくてもいいと言ったにも関わらず、継いだ4代目の想い、そして4だいめの人生をも変える「フクシマの看板コロッケ」をたくさんの人に知ってもらいたいと思い、制作しました。

【制作後記】
「東京で働いていっぱいいっぱいになったとき、仕送りのコロッケ食べて泣き崩れちゃいました。」と話す4代目の智哉さん。実はこの言葉、1回目の取材では聞き出せませんでした。2度目の取材、コロッケを作る過程の音のみを録音する日に、たまたま録れた本音でした。「精肉店のコロッケ」は、題材としては珍しいものではありませんが、「コロッケを売るために肉を売っている」と言ってしまうほど力を入れている精肉店はここだけではないでしょうか。お店がこれからもずっと続いていくことを願いながら制作させていただきました。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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