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2023年9月22日 (金)

戸河内の刳物 ~木と向き合って、70年~

2023年9月18日~2023年9月24日放送 
中国放送 RCCフロンティア 猪野 竜平

【番組概要】
刳物(くりもの)とは、ノミやカンナ、小刀などを使って木を刳りぬいて作られる加工品のこと。広島県北西部に位置する山県郡安芸太田町戸河内地区では、この土地で育った木を使い、丁寧な手仕事で「戸河内刳物」が作られています。広島県指定伝統的工芸品にも選ばれ、先日開催されたG7広島サミットでも国際メディアセンターに広島の逸品として展示され注目を集めました。戸河内で生まれ育ち、刳る仕事に携わって70年の職人、横畠文夫さんは自らが磨き、曲げてアレンジした12種類の刃物を使い分け、16工程を経てお玉杓子(お玉)を生み出します。                            現在は機械化、大量生産の時代。ともすれば1枚の硬貨でお玉もスプーンもお皿も手に入れることができますが、横畠さんはお客さんの要望を聞き、毎日1本1本、木を削り、刳り貫き、商品を作り上げます。生まれ育った土地で、そこに育つ木を活かしながら仕事を続ける横畠文夫さんの70年に耳を傾けます。

【制作意図】
戸河内がある山県郡安芸太田町は、広島では多くのスキー場があり賑わうスポットですが、私自身足を運ぶことが少ない地域でした。そんな戸河内にG7広島サミット会場にも展示された逸品があるとは!と驚いたのがきっかけです。そして、そもそも「刳物(くりもの)」という聞き馴染みのない不思議な言葉に興味が湧いたこと。また、広島で杓子といえば「宮島」というイメージも強いので、戸河内刳物とは如何なるものかを確かめたく、取材しました。なんでも安価に大量に手に入る時代に、手間や時間がかかっても欲しくなる一品。そしてずっと手元に置いておきたくなる一品。お客さんのことを思いながら仕事を続ける横畠文夫さんの思いと、豊かな自然あふれる戸河内に響く木の音をお届けします。

【制作後記】
取材対応してくれたのは、横畠文夫さん智保子さん夫妻。静かに作業を続ける文夫さんと明るく迎え入れてくれる智保子さんにまず心を奪われました。まるで「実家に帰ってきたかな?」と思ってしまうくらいのアットホームな工房で取材がスタート。作業を見つめていると、設計図や電動に頼る機械などは一切無し!長年の経験と愛用の道具を手に、丸太からみるみるうちにお玉の形を刳りぬいていく工程は何度見ても飽きないし、到底自分には真似できないと思うほど。しかし横畠夫妻は見学体験会も開き、素人にも手取り足取り作業工程を教えてくれます。工房には近くの小学校からのお礼の手紙や体験で作られたお玉がたくさん並んでいました。横畠さんが70年間積み上げてきた技術と努力はもちろんですが、こういった人柄が商品にもきっと伝わっているのだと思います。ちなみに、帰り際には手作りの草餅を手土産に持たされ、バックミラー越しに見送ってくれる姿を見て、次はプライベートでも必ず再訪しようと心に誓いました。



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半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

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