語り継ぐ夏 ~すみてる少年の8月9日~
2023年8月28日~2023年9月3日放送
長崎放送 報道制作部 中島千夏
【番組概要】
1945年8月9日11時2分。長崎に投下された一発の原子爆弾により、まちは一瞬にして焦土と化しました。その年の12月までの死者は7万3,884人、負傷者は7万4,909人。奇跡的に生き延びた被爆者の中には、生涯、原爆の後遺症に苦しみ続けた人もいます。背中一面と腕にやけどを負い、「赤い背中の少年」と呼ばれた谷口稜曄(すみてる)さんもその一人です。床ずれで胸はえぐり取られたようになり、皮膚呼吸の出来なくなった体で、被爆の悲惨さを語り続けました。2017年8月、核兵器禁止条約の採択を見届け、88歳の生涯を閉じました。核兵器のない世界を見ることが出来なかったことは言うまでもありません。78年前のあの日、谷口さんはどうやって生き延びたのか。谷口さんの半生を描いた絵本「生きているかぎり語りつづける」(舘林愛 著)の朗読を通して伝えます。
【制作意図】
被爆から78年。台風6号の接近により、長崎市の平和祈念式典は60年ぶりに屋内での縮小開催となり、ほとんどの被爆者が参列できないという異例の8月9日となりました。市内各地で行われるはずだった平和活動も中止を余儀なくされ、国内外から多くの人が長崎の地に集うことはできませんでした。
被爆者の平均年齢は85歳を超えました。被爆者から直接その体験を聞くことの出来ない時代が、そこまできています。被爆者が恐れていることは、ふたたび核が使われること、そして、被爆の実相が忘れ去られてしまうことです。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、北朝鮮のミサイル、中国の核開発…。核兵器使用のリスクが高まるいまだからこそ、被爆者が残した貴重な証言を語り継ぎます。
【制作後記】
朗読のピアノ演奏に協力頂いたのは、長崎県佐世保市在住のピアニスト・重松壮一郎さんです。即興演奏などの独自のスタイルで国内のみならず海外でもライブ活動を行っていて、平和を願うピースコンサートも毎年続けておられます。絵本の朗読を快諾くださった著者の舘林愛さんと重松さんに心から感謝致します。
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