故郷の心を奏でる~立山杉で作ったSDGSな胡弓~
2022年8月22日~2022年8月28日放送
信越放送 コンテンツ局 佐伯和歌子
【番組概要】
富山県富山市南西部の山あいの町、八尾。毎年9月1日から3日まで開催される「おわら風の盆」は、300年を超える歴史ある民謡行事です。昔の面影を残す町並みに、数千個のぼんぼりが灯る幻想的な風景の中、編み笠を被った男女が「越中八尾おわら節」の唄に合わせて静かに優美に踊ります。この唄の旋律に寄り添い、ひときわ哀調に満ちた音色なのが和楽器「胡弓」です。胡弓は日本唯一の擦弦楽器。三味線を小さくした楽器に、馬のしっぽにテンションをかけたものを擦り付けて音を出します。今から2年前、富山市岩瀬にある和楽器専門店「しゃみせん 楽家」の社長、濱谷拓也さんは新しい胡弓作りに挑戦します。森林や動物保護に貢献するSDGSな胡弓「森の胡弓」です。「日本の音を、日本の木で奏でたい」そんな思いから新しい胡弓の開発がスタート。材料として選んだのは、おわらの故郷である八尾にも多く自生している「立山杉」。通常は動物の皮を張る共鳴部も杉を使っています。立山杉で作った新しい胡弓「森の胡弓」で奏でる「越中八尾おわら節」の演奏をお送りします。
【制作意図】
今や「おわら」の代表的な存在として取り上げられることの多い「胡弓」。胡弓は、日本唯一の擦弦楽器として江戸時代初期に普及したといわれていますが、三味線のように間を重んじる日本人には、弦で擦る連続音が馴染めず尺八にその役割をゆずり、今では胡弓の演奏を聴く機会も少なくなりました。富山市岩瀬にある和楽器専門店「しゃみせん 楽家」では、胡弓の魅力を全国に発信するため、オリジナル教本や譜本、胡弓教室など様々な取り組みを行っています。そんな中で生まれた新しい胡弓「森の胡弓」は、杉を使う事でコストを下げ、誰でも気軽に胡弓に触れることが出来、さらに森林保護、動物保護にもつながるSDGSな楽器となりました。伝統的な胡弓と新しい胡弓、それぞれの魅力を伝えつつ、まずは一人でも多くの方に哀調に満ちた美しい胡弓の音色に触れてほしい、そんな思いで制作しました。
【制作後記】
取材時に生まれて初めて胡弓を触り、そして音の出し方を教えて頂きました。音を出すには力を入れない方がいい事、3本ある弦のうち1本しかほとんど使わない事を知りました。そして何度か練習するだけでとってもいい音が鳴るのです!力の抜き方がヨガにも似ているのうな気がして(と、言ってもヨガに詳しいわけではありませんが)、とてもリラックスして弾く事が出来ました。胡弓は、いい音が手軽に出せてとても気持ちの良い楽器でした。今後、「森の胡弓」がどんな風に進化していくのか、どんな風に地域になじみ、演奏され、新しいコラボレーションが生まれるのか引き続き取材していきたいと思います。
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