受け継がれる和の響き
北日本放送 報道制作局 アナウンス部 佐藤 栄治
富山県内で今からおよそ140年前から唯一邦楽の笛、竜笛、能管、囃子笛を年間数百本製造している工場「新月の笛」。
この工房の5代目となる松岡正樹さん(33歳)が笛師の道に入るきっかけは、結婚してからである。
元々この笛作りは奥さんの実家の家業であった。はじめ家業の一番忙しい時期に手伝いをやっているうちに、師匠であるおじいさんから後継者にと誘われ、それをきっかけに会社勤めを辞めて本格的に笛師への道を進むことになった。
これまで10年間は師匠であるおじいさんと共に笛を作り、一筋に打ち込んでいた松岡さんであったが、今年の夏、突然一人立ちしなくてはならなくなった。
おじいさんが脳梗塞に倒れ入院したのである。師匠のいない工房で一人作業を続ける松岡さん。今までは困ったときすぐ隣に師匠がいてなんでもすぐに聞くことが出来たが、今はそれもできない不安と、笛職人としての夢。
様々な思いを語ってもらいながら、地元で雅楽などの演奏者として活躍している松岡さんの演奏も紹介します。
笛の演奏は、初冬には珍しく青空の見える北陸富山の、刈り取りが終わった田んぼを望む工房横の庭で収録しました。
初冬のおだやかな空に響く日本古来の音と、いつも前向きに明るい人柄の笛師、松岡正樹さんの魅力をお伝えします。