国道沿いの遊園地はどこへ
AM神戸 報道制作部 池田 奈月
全国的にも類を見ない「国道沿いの遊園地」が姿を消すことになったと聞いた時、真っ先に考えたのが動物たちの行く末と、そこに親しんできた人々の気持ちでした。私自身も数えきれないほど宝塚ファミリーランドに足を運んだ一人です。
取材のために改めてその遊園地に足を運んでみると、国道と塀一枚隔てただけの所にライオンや象、珍しいホワイトタイガーなどが存在することを不思議にさえ感じました。在るのが当たり前で意識したことが無かったのに…。
「国道沿いの遊園地」は、開園から90年以上の長い時を積み重ねることで、私たちの心に息づいていたのです。今回は、「動物たちの鳴き声や訪れた人々の声そのものが風物詩である」というスタンスで番組を作りました。
番組の最後に第3者による客観的な解説を加えることも考えましたが、それはせず訪れた人の声を再度挿入することとしたのは、「国道沿いの遊園地」に集ってきた人の心・気持ちも消えていく風物詩の1つと捉えたからです。
最後に語ってくれた婦人の涙声がその象徴でもありました。
風物詩を守って行くのが人間なら、自らの都合で消えいくものにしてしまうのも人間です。「国道沿いの遊園地」はそれぞれの人の心の中に移転する」と番組を締めくくりましたが、それは、単に全てをキレイごとで収めるという意味ではありません。
集った人々の笑顔や涙の蓄積の上に今回生まれたやるせなさや、動物たちを翻弄する私たち人間の責任について考えて欲しいと、一石を投じる気持ちも込めたつもりです。