« おしゃぎりの町 | メイン | 三徳川そのせせらぎに耳すまし…かじかの輪広がらん »

2002年7月29日 (月)

国道沿いの遊園地はどこへ

AM神戸 報道制作部 池田 奈月

全国的にも類を見ない「国道沿いの遊園地」が姿を消すことになったと聞いた時、真っ先に考えたのが動物たちの行く末と、そこに親しんできた人々の気持ちでした。私自身も数えきれないほど宝塚ファミリーランドに足を運んだ一人です。 

取材のために改めてその遊園地に足を運んでみると、国道と塀一枚隔てただけの所にライオンや象、珍しいホワイトタイガーなどが存在することを不思議にさえ感じました。在るのが当たり前で意識したことが無かったのに…。

「国道沿いの遊園地」は、開園から90年以上の長い時を積み重ねることで、私たちの心に息づいていたのです。今回は、「動物たちの鳴き声や訪れた人々の声そのものが風物詩である」というスタンスで番組を作りました。

番組の最後に第3者による客観的な解説を加えることも考えましたが、それはせず訪れた人の声を再度挿入することとしたのは、「国道沿いの遊園地」に集ってきた人の心・気持ちも消えていく風物詩の1つと捉えたからです。

最後に語ってくれた婦人の涙声がその象徴でもありました。
風物詩を守って行くのが人間なら、自らの都合で消えいくものにしてしまうのも人間です。「国道沿いの遊園地」はそれぞれの人の心の中に移転する」と番組を締めくくりましたが、それは、単に全てをキレイごとで収めるという意味ではありません。

集った人々の笑顔や涙の蓄積の上に今回生まれたやるせなさや、動物たちを翻弄する私たち人間の責任について考えて欲しいと、一石を投じる気持ちも込めたつもりです。

半世紀以上の歴史を持つ録音構成番組。全国の放送局がその土地ならではの風俗をそこでしか聞くことのできない音とともに紹介します。

ブログ powered by TypePad